2024年05月01日
訪問看護のスケジュール管理はホワイトボードで行われることもありますが、エクセルで表を1日ごとに作成し管理を行っている場合が多いです。今回はエクセルでスケジュール管理の表を作成する方法や、注意点を解説していきます。
訪問看護ステーションで作られるベーシックな予定表をExcel作ることができ、注意点がわかっているとミスも少なくできますので、利用者様やケアマネージャーからの信頼の獲得にもつながるため、ぜひ最後までご一読ください。
まず訪問看護にとって、スケジュール管理の重要性や怠った場合に起こる弊害はどのようなものがあるのでしょうか。それぞれを細かく見ていきましょう。
訪問看護は30分以下〜90分以上まで個々のケアに応じて訪問時間が異なります。またケアプランによってケアの開始時間も決められており、効率よく訪問をしないと生産性が下がってしまうため、経営にとってもスケジュール管理が大切です。
またスタッフの動きを把握するためにもスケジュール管理は必要になります。管理が甘いとスタッフによってスケジュールの詰まり具合に差が出てしまいます。両スタッフの賃金が同じであれば、不平不満も出てくるでしょう。
訪問看護ではスケジュール管理をすることは生産性を上げることはもちろん、スタッフの労務管理の面でも大切です。スケジュール管理がスムーズに行えるかどうかがステーションの存続にもかかわってきます。
訪問看護でのスケジュール管理は主に、イベントと移動時間、内勤業務などと分けることができます。イベントとは利用者宅へ訪問したり、サービス担当者会議に出席するなどの時間のことを指します。
また違う利用者宅に向かうあいだの必要な移動時間も含めなければ、訪問時間がずれてしまいます。どの程度の移動時間が必要になるのかなどもスケジュールに入れ込む必要があります。
スケジュール管理はステーションの管理者が行うことが多いです。管理者は他にも利用者の対応や契約、業務管理などさまざまな業務があるため、スケジュール管理だけに時間を割くことは難しく、負担になる業務の1つです。
前述した通り、スケジュール管理を怠ると訪問時間を間違ったり訪問が中止になっているにもかかわらず訪問してしまうなどすると利用者やケアマネージャーからの信頼を失うことになります。
例えばキャンセルになった予定にも関わらず訪問すると、看護師の移動が時間ロスになってしまうため生産性が落ちてしまいます。看護師の時間単価は高価ですので損失は大きくなるでしょう。もともと確認をしていれば防げるミスのため、回避するべき事象です。
またしっかり考えずにスケジュール管理を行っていると、効率が悪いスケジュールとなってしまいます。効率が悪いと看護師の疲労感につながり負担が大きくなります。ガソリン代などコストも余計にかかるでしょう。
このように、スケジュール管理は訪問看護の業界において重要になってきます。また、スケジュール管理におけるツールとしてエクセルがあります。次章では、具体的にエクセルでのスケジュール管理表の作成方法を紹介します。
スケジュールはエクセルで作成し、管理することができます。実際にエクセルで簡単に作成する方法を紹介します。しかしエクセルはあくまでも表計算ソフトであってスケジュール管理に特化したソフトではありませんので注意が必要です。
今回は4スタッフの1日分(8時から17時まで)のスケジュールを作成していきます。こちらをベースにしつつ、7日分を横に繋げることで1週間分の予定表を作成できます。ステーションの勤務時間に合わせて作ったり、時間外の稼動がある場合は多く作ったりと応用してみてください。
まずは1日の動きを把握するため、左の列に時間軸を作成していきます。始業時間から終業時間までの時間を記入して行きます。訪問スケジュールは30分きざみが多いため、1行につき30分の認識で作成しましょう。
次に2行目にスタッフの名前が入れられるように欄を作っていきます。横並びになるように苗字のみまたはフルネームを入れていきます。必要であれば、1行上に役職名や資格記入欄を作成します。
時間軸の罫線は実線を使わずに点線を使用することをおすすめします。実線を使用してしまうと線が多くなりすぎて、見間違いを起こす可能性があります。人数が多くなってくると、左端と右端の行に時間軸を入れると確認しやすくなります。
イベントを追加したときに、内容を記載するため行や列の幅には気をつけて作成します。幅を広げたい列(アルファベット)を選択して、セルとセルの間にカーソルを合わせると形が変わります。
ドラッグして動かすと選択したセルの幅が均等になります。これは行も同様で、左にある縦列に並ぶ数字を選択して、ドラッグをすると行の高さが選択されたものは均等にすることが可能です。
印刷したいときにどの程度の幅、高さがベストなのかは印刷プレビューや印刷範囲指定で確認しながら決めていきましょう。あまりに小さすぎるとミスにつながり、大きすぎると確認しにくいので注意が必要です。
予定されているイベントを組み入れて、それぞれに色をつけていきましょう。セル1つが30分と認識して、ケアプランに記載されている時間分、塗りつぶししていきます。(例:60分のサービスはセル2つ、90分のサービスはセル3つを塗りつぶす)
移動時間はセル1つ(30分)程度あればよいでしょう。訪問圏域が広いステーションの場合は前もって移動時間を確認しておく必要があります。訪問時間や移動時間は色を区別しておくとわかりやすいです。
移動時間の塗りつぶしは、多色になってしまうため、あえて塗りつぶさない場合もあります。また直行直帰する場合、給与計算の確認をするときに移動時間に入る場合と入らない時があるため、確認が必要です。
また介護保険でのサービスか医療保険でのサービスかを区別すると、確認するスタッフも記録の際にわかりやすいでしょう(例:介護保険は赤、医療保険は青など)。塗りつぶしたらイベント名を見える字色で記載します。(例:利用者名、会議、内勤など)
休日が統一されているステーションであれば良いですが、それでも有給休暇や研修などでステーションにいない場合があります。休んでいるスタッフの列を丸ごと消してしまうと、今後、コピーして使う際に再度入れ込む必要があるため、手間がかかります。
間違えて休んでいるスタッフにイベントを割り振ってしまうことを避けるために、出勤しないスタッフは全てのセルをグレーなどに塗りつぶしておきましょう。グレーにすることで休みと認識できて間違いが起こりません。
スケジュールのみであれば簡単に作成することができますが、エクセルには関数を利用した付加機能を作ることも可能です。1日の訪問件数の把握や手入力を省くためにプルダウンを作ることも可能です。
訪問件数
スタッフごとの看護保険の数を自動でカウントするには、看護保険の数を出力したいセルに、(=COUNTIF(B3:B17,”看護保険”)を入力します。「””」のあいだに、医療保険での訪問は「医療保険」と入力すると、B3からB17までのあいだに「医療保険」とついた個数を自動で数えてくれます。このようにして、看護保険と医療保険の数をスタッフごとに計算します。
合計訪問数を出したい場合にはB23に関数(=SUM(B21:B22))と入力すると、介護件数と医療件数の合計数が出てきます。
この関数は、B21の数(看護保険の数)と、B22の数(医療保険の数)の合計を計算することによって、合計の訪問数を計算しています。
また、合計数を求めたセルの右下をクリックしながら右に動かすと、内容をコピーしてくれるため、作業が楽になります。
プルダウンの作り方
次にプルダウンの作成です。毎回「介護」や「医療」と打ち込むのは労力がかかるため、リストを作って選択できると効率的です。まずは空いているスペースどこでもいいので、下図のように、看護保険、医療保険とセルに入力します。
プルダウンを作りたいセルを選択して、次に一番上の「データ」から「入力規則」を選択します。(OSにより少し内容が異なります)
設定画面が出てくるので、「すべての値」と書いてある隣の逆三角形をクリックし、「リスト」を選択します。
「リスト」にしたら新たに「元の値」が出てくるので、下図の場所をクリックします。
タブが小さくなるので、先ほど準備した「医療保険」「介護保険」を選択しましょう。
最後に入力欄の右側にある記号(ボタン)をクリックしてタブを戻します。
最後に、「OK」を押します。
終わるとセルの右側に逆三角形のボタンが出現し、押すと選べるようになっています。
また、プルダウンで色分けを自動で行う方法は、以下の記事をご覧ください。
エクセル(Excel)プルダウン設定方法!一連の流れまるっと解説
(https://tinyurl.com/npazwjus)
以上のように複数スタッフ・1日の予定を時間軸で作成することができます。実際の訪問看護ステーションでは、これを7日分横に並べ、1週間分で1タブとして作成するケースが多いです。
そのように1週間分作成しておくことで、翌週の予定を作成する際は、前週のタブを複製し、必要な変更を加えることで効率的にスケジュール管理をすることができます。
しかしExcelでのスケジュール管理には注意点もありますので、次章で詳しく解説します。
エクセルで簡単に表作成をし、スケジュール管理できることはわかりました。しかし前述した通り、エクセルは表計算ソフトでありスケジュール管理をしてくれるソフトではありません。
エクセルで表を簡単に作成できる半面、覚えておきたいことが、確認と作成に労力がかかることです。具体的にどのような注意点があるのかを細かく見ていきましょう。
エクセルでは訪問予定の抜けや訪問時間の間違えを指摘する機能はありません。実際には確認しながら表に落とし込む作業が必要です。集中して確認しながら表に入れても、実際に作業するのは人間なのでミスが出てきてしまいます。
そのためイレギュラーな予定や多忙な業務の中で行う場合にはミスが多くなるため、複数人で確認作業を行う必要があります。ミスをそのままにしておくと信頼を失い、機会損失にもつながるため注意が必要です。
他者との確認は提供票と完成したスケジュール管理表を準備して、作成者と確認者が息を合わせてきちんと1つずつの確認を行いましょう。ご利用者様の人数が増えたり職員の人数が増えたりすると、スケジュール管理が大変になってきます。
確認作業で時間がかかってしまうケースも考えられますが、必ず確認しあいましょう。
エクセルで作成したものはファイルを共有することも可能ですが、紙媒体に印刷して配布する場合もあります。アドレスを間違え外部の関係者にファイル共有をしてしまった、配布した紙を訪問先で落としてしまったということも無きにしもあらずです。
訪問スケジュールには個人情報が必ず必要なため記載しているはずです。確認する端末にパスワードをかけてセキュリティを強化する、紙媒体も必要最低限のものだけを渡すといった対策が必要になります。
ファイルの共有であれば削除や決まった場所に整理します。紙媒体の場合にはシュレッダーを使用することが基本です。ゴミ箱にそのまま捨ててしまうことやメモ用紙として利用することは個人情報の流出につながるためやめましょう。
共有した後に訪問スケジュールの修正を行うことは多々あります。ご利用者様の都合や体調が悪くなった場合に中止になります。もちろん緊急対応の場合もスケジュールを編集していきます。
紙媒体の場合には赤ペンなどで修正を付け加える、ファイルの共有をした場合にはノートアプリなどにエクスポートして修正を加える必要があります。Googleのサービスの1つであるスプレッドシートであれば、編集者が変更を加えると自動的に更新はされます。
しかし、変更した場合には、何がどのように変わったのかなどを記載し連絡する必要があるため、作業量は増えてしまいます。
次章では、エクセルでのスケジュール管理の問題点を解決する方法を紹介します。
エクセルは無料で使えるといったメリットがある反面、データの共有は自動で行われない、報告書などには別のツールが必要といったデメリットも存在します。また、入力ミスなどのミスが起こり、ただし訪問先に行けないといった問題が発生すれば、信用の低下などにも繋がります。
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